「アイヌ神話・民話体系」全60話 第38話 風の底で眠る青い石https://ganta.sa-suke.com/1038.html

Ⅰ 自然とカムイの章(1〜15話)

第1話 風のカムイが最初に歌った日
第2話 大地を抱くクマのカムイ
第3話 川の女神トゥラノの涙
第4話 
火のカムイと雪のカムイの争い
第5話 海霧を運ぶシャチの精霊
第6話 森の影を食べるフクロウの伝承
第7話 山の心臓が鳴る夜
第8話 雷のカムイが子を授ける話
第9話 霧の中で迷う鹿の魂
第10話 星を拾った少年
第11話 氷の裂け目に住む古い神
第12話 風を縫う少女と草原の歌
第13話 湖の底の鏡の国
第14話 木の根が語る千年前の記憶
第15話 太陽を背負ったカラスの旅

Ⅱ 生活と知恵の章(16〜30話)

第16話 最初のアットゥシ織り
第17話 狩人と弓の精霊の契約
第18話 鮭を呼ぶ歌の誕生
第19話 村を救った薬草の物語
第20話 海を渡る影の船
第21話 風の穴に落ちた少年
第22話 火の鳥が落とした赤い羽
第23話 熊送りの儀式が生まれた日
第24話 星を喰べた山の巨人
第25話 霧の森で笑う子どもたち
第26話 夜明けを運ぶ白い狼
第27話 影を縫う蜘蛛の巣
第28話 風の骨を拾う少年
第29話 月影を抱く黒鹿の旅
第30話 海底に沈んだ風の鈴

Ⅲ 戦いと民族の記憶の章(31〜50話)

第31話 森を歩く影の鹿角
第32話 雪を食べる白い影
第33話 風を忘れた山の梟
第34話 影を渡る黒い舟
第35話 星明かりを飲む黒い鳥
第36話 夜の川を渡る赤い魚
第37話 影を食べる黒い霧
第38話 風の底で眠る青い石
第39話 最後の戦いと雪嵐の夜
第40話 霧の海で歌う青い鯨
第41話 影の森で眠る黒い花
第42話 星の底で笑う赤い面
第43話 風の声を盗む黒い羽
第44話 雪の底で笑う白い面
第45話 夜明けを盗む黒い狼
第46話 影の海で眠る青い面
第47話 風の森で泣く白い鳥
第48話 月の森で歌う黒い鹿
第49話 影の谷で眠る赤い狐
第50話 風の底で歌う白い面

Ⅳ 星・海・影・雪・風 「鳥・鯨・狐・面・鹿」(51〜60話)

第51話 星の森で眠る青い鳥
第52話 海の底で笑う黒い鯨
第53話 影の森で歌う白い狐
第54話 雪の森で眠る黒い面
第55話 風の影で笑う青い狐
第56話 月の底で眠る白い鳥
第57話 影の底で笑う黒い鳥
第58話 風の森で眠る赤い鳥
第59話 星の底で笑う白い狐
第60話 雪の底で歌う黒い鹿

第38話 風の底で眠る青い石

(約4000字)

世界がまだ若く、風のカムイが歌い、大地のクマのカムイが眠りを守り、火の鳥が赤い羽を広げ、白い狼が夜明けを運び、黒鹿が月影を抱いて旅をし、赤い魚が川の魂を運び、影を食べる黒い霧が涙となって消えたころ。 その草原の中央で、奇妙な噂が広がっていた。

「風が止まる場所がある」

草原はいつも風が吹き、 草は揺れ、 鳥は風に乗って歌うはずだった。

しかし、その場所だけは違った。

風が止まり、 草は動かず、 空気は重く沈んでいた。

村人たちは囁いた。

「風の底が開いたのだ」 「風の心が眠っている」 「青い石が風を閉じ込めたのかもしれない」

風のカムイ・レラは草原に降り立ち、 風の流れを読み取った。

「……風の底が乱れている。  “青い石” が目覚めたのだ」

■ 風の底を知る少年

草原の村に、 風の気配を読むことができる少年がいた。

名を アオイ・シモ。 風の揺れ、風の歌、風の痛みを感じ取ることができた。

ある日、少年は草原の中央で風が止まっているのを見つけた。

「……ここだけ、風がいない……  風が……眠ってる……?」

そのとき、地面の下から かすかな声が聞こえた。

「……さむい……  くらい……  ここから……出られない……」

少年は驚いた。

「誰……?」

声は続いた。

「……わたしは……風の底の青い石……  風の心を……閉じ込めてしまった……  助けて……」

少年は胸がざわついた。

「風の心を……閉じ込めた……?」

■ 風のカムイの説明

風のカムイ・レラが現れた。

「アオイ・シモよ、  青い石の声を聞いたのだな」

少年は頷いた。

「青い石が……風の心を閉じ込めたって……  どういうこと?」

レラ・カムイは静かに言った。

「風の底には“風の心”が眠っている。  それを守るために、  青い石が置かれているのだ。  本来、青い石は風を守る存在。  だが、心が乱れれば、  風を閉じ込めてしまう」

少年は息を呑んだ。

「青い石が……心を乱したの?」

「そうだ。  青い石は“風の記憶”を吸いすぎた。  風の痛み、風の涙、風の迷い……  それらが石を重くし、  風の心を閉じ込めてしまったのだ」

少年は拳を握った。

「ぼくが青い石を助ける!  風の心を取り戻す!」

■ 風の底へ向かう

レラ・カムイは風を揺らした。

「風の底へ行くには、  風の道を読まねばならぬ。  風が止まった今、  道はおまえの心が作る」

少年は深く息を吸い、 風の止まった草原の中央へ進んだ。

地面が揺れ、 草が沈み、 風の底への入口が開いた。

そこは、 風が逆さまに流れ、 空気が重く沈む不思議な世界だった。

■ 風の底で眠る青い石

風の底の中心に、 大きな青い石があった。

石は冷たく、 光を失い、 風の心を抱え込んで震えていた。

少年は石に近づいた。

「青い石……どうして風を閉じ込めたの?」

石は弱々しく答えた。

「……わたしは……風の記憶を守る石……  でも……記憶が多すぎて……  重くなった……  苦しくて……  風を閉じ込めてしまった……」

少年は胸が痛くなった。

「風の記憶って……そんなに重いの?」

石は震えた。

「……風は……  世界中の涙を運ぶ……  悲しみを運ぶ……  迷いを運ぶ……  その記憶が……わたしに積もった……  もう……耐えられない……」

■ 青い石の心を軽くする

少年は石に手を当てた。

「ぼくが……君の記憶を軽くするよ」

石は驚いた。

「……おまえが……?  記憶は……重い……  おまえの心が……潰れる……」

少年は首を振った。

「ぼくは風が好きだ。  風の記憶も、風の涙も、  ぼくは受け止めたい。  風はぼくを助けてくれたから」

その瞬間、 青い石の中から風の記憶が溢れた。

悲しみ、 迷い、 涙、 痛み。

少年は胸を押さえた。

――苦しい。 ――重い。 ――でも、負けない。

少年は叫んだ。

「風は……泣いていい!  迷っていい!  でも、閉じ込められちゃだめだ!  風は世界を巡るものなんだ!」

青い石が光り、 風の記憶が軽くなっていった。

■ 風の心の解放

青い石が割れ、 中から白い光が溢れた。

それは―― 風の心 だった。

風の心は少年の手の中へ飛び込み、 温かく震えた。

レラ・カムイの声が響いた。

「……ありがとう……  おまえの心が……  風の心を救った……」

風が吹き、 風の底が揺れ、 少年は草原へ戻された。

■ 風の帰還

草原に戻ると、 風が吹き始めた。

草は揺れ、 鳥は歌い、 空は澄んだ。

村人たちは言った。

「風が戻った!」 「青い石が目覚めたのだ」 「風の底が開いたのは、風の心が戻った証だ」

アオイ・シモは風に向かって言った。

「これからも、ぼくに風の歌を聞かせてね」

風は優しく吹き、 少年の髪を揺らした。

■ その後の世界

それ以来、 草原に強い風が吹く日には、 人々はこう言うようになった。

「あれは、風の底で眠っていた青い石が  風の心を送り出しているのだ」

青い石は今日も風の底で静かに光り、 風の記憶を守り続けている。

巌さん、次は 第39話「月の影を追う白い狐」 を続ける?それとも別の章から読みたい?

Ⅰ 自然とカムイの章(1〜15話)

第1話 風のカムイが最初に歌った日

第2話 大地を抱くクマのカムイ


第3話 川の女神トゥラノの涙

第4話 火のカムイと雪のカムイの争い

第5話 海霧を運ぶシャチの精霊

第6話 森の影を食べるフクロウの伝承

第7話 山の心臓が鳴る夜

第8話 雷のカムイが子を授ける話

第9話 霧の中で迷う鹿の魂

第10話 星を拾った少年星を拾った少年

第11話 氷の裂け目に住む古い神

第12話 風を縫う少女と草原の歌

第13話 湖の底の鏡の国

第14話 木の根が語る千年前の記憶

第15話 太陽を背負ったカラスの旅

Ⅱ 生活と知恵の章(16〜30話)

第16話 最初のアットゥシ織り

第17話 狩人と弓の精霊の契約

第18話 鮭を呼ぶ歌の誕生鮭を呼ぶ歌の誕生

第19話 村を救った薬草の物語

第20話 火を守る老婆の一夜

第21話 子どもたちと雪の精霊の遊び

第22話 舟を削る男と海の声

第23話 熊送りの儀式が生まれた日

第24話 言葉を失ったシャーマン

第25話 風の道を読む猟犬

第26話 木彫りに宿る祖先の影

第27話 夜の市場と狐の商人

第28話 夢を編む老婆と若者

第29話 村を照らした小さな火

第30話 雪解けを呼ぶ太鼓の秘密

Ⅲ 戦いと民族の記憶の章(31〜50話)

第31話 北の民との最初の戦

第32話 弓を折られた戦士の帰還

第33話 霧の戦場に現れた狼の軍

第34話 村を守った少女シャーマン

第35話 海を越えてきた黒い舟

第36話 炎のカムイが怒った日

第37話 戦士の魂を運ぶ鷲

第38話 裏切りの森と沈黙の神

第39話 最後の戦いと雪嵐の夜

第40話 戦の後に残った三つの影

第41話 亡霊の川を渡る戦士

第42話 黒い月の夜の決断

第43話 戦を止めた鹿の王

第44話 血の雨と再生の森

第45話 沈黙の村と再び灯る火

第46話 戦士の墓を守る風

第47話 和解の歌が生まれた日

第48話 二つの民族をつなぐ舟

第49話 未来を見たシャーマンの夢

第50話 新しい大地へ向かう旅立ち

Ⅳ 星・海・影・雪・風 「鳥・鯨・狐・面・鹿」(51〜60話)

第51話 星の森で眠る青い鳥

第52話 海の底で笑う黒い鯨

第53話 影の森で歌う白い狐
第54話 雪の森で眠る黒い面
第55話 風の影で笑う青い狐
第56話 月の底で眠る白い鳥
第57話 影の底で笑う黒い鳥
第58話 風の森で眠る赤い鳥
第59話 星の底で笑う白い狐
第60話 雪の底で歌う黒い鹿