| 「アイヌ神話・民話体系」全60話 第51話 星の森で眠る青い鳥https://ganta.sa-suke.com/1051.html | |
Ⅰ 自然とカムイの章(1〜15話) 第1話 風のカムイが最初に歌った日 第2話 大地を抱くクマのカムイ 第3話 川の女神トゥラノの涙 第4話 火のカムイと雪のカムイの争い 第5話 海霧を運ぶシャチの精霊 第6話 森の影を食べるフクロウの伝承 第7話 山の心臓が鳴る夜 第8話 雷のカムイが子を授ける話 第9話 霧の中で迷う鹿の魂 第10話 星を拾った少年 第11話 氷の裂け目に住む古い神 第12話 風を縫う少女と草原の歌 第13話 湖の底の鏡の国 第14話 木の根が語る千年前の記憶 第15話 太陽を背負ったカラスの旅 Ⅱ 生活と知恵の章(16〜30話)第16話 最初のアットゥシ織り Ⅲ 戦いと民族の記憶の章(31〜50話)第31話 森を歩く影の鹿角
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第51話 星の森で眠る青い鳥 世界がまだ若く、風のカムイが歌い、大地のクマのカムイが眠りを守り、火の鳥が赤い羽を広げ、白い狼が夜明けを運び、黒鹿が月影を抱いて旅をし、風の底で歌う白い面が迷いを風に返したころ。 その夜、星の森に奇妙な光が降りてきた。 青い光――星の色をした鳥が、森に落ちた。 森の木々はざわめき、 星の子たちは震えた。 「星の森に“青い鳥”が眠っている」 「鳥が眠ると、星が揺れる」 「星の心が弱っている」 その噂は、 星の揺れを読む少女 ホシカ・メノコ の耳にも届いた。 少女は夜空を見上げ、 星の震えを感じ取った。 「……星が泣いてる…… 星の森に落ちた青い鳥が、 星の心を抱えて眠ってる……」 ■ 星の森へ向かう星の森は、 夜になると星の光が降り注ぐ不思議な森。 木々は星の影をまとい、 葉は光を吸い、 森全体が夜空の一部のようだった。 少女は森へ入り、 星の揺れを辿った。 やがて、森の奥で 青い光が脈打つように揺れていた。 そこに―― 青い鳥 が倒れていた。 鳥は星の光をまとい、 羽は青く輝き、 胸は弱く上下していた。 少女は息を呑んだ。 「……星の鳥…… どうして眠っているの……?」 ■ 青い鳥の声少女がそっと鳥に触れると、 鳥はかすかに目を開けた。 「……わたしは……星の鳥…… 星の心を運ぶ…… だが……心が重く…… 飛べなくなった…… だから……森に落ちた……」 少女は胸が痛くなった。 「星の心が……重いの……?」 鳥は弱々しく頷いた。 「……星は……光を放つ…… だが……光が届かぬ夜もある…… 誰にも見られぬ夜もある…… そのたびに……星は迷う…… “わたしの光は意味があるのか”と…… その迷いが……心を重くする…… わたしは……その心を運ぶ…… だが……重すぎて……眠ってしまった……」 少女は涙をこぼした。 「星は……意味があるよ。 星の光は、夜を照らしてくれる。 迷っても、星は輝いてるよ」 ■ 星の心の重さそのとき、森が揺れた。 星の影が渦を巻き、 青い鳥を包み込んだ。 「……星は……弱い…… 光は……脆い…… 星は……消えることを恐れている…… その恐れが……心を重くする……」 少女は影に飲まれそうになりながら叫んだ。 「星は弱くない! 星は夜を照らすために生まれたんだよ! 星の光は、誰かの心に届いてる!」 青い鳥は震えた。 「……届いている……? わたしの光は…… 誰かに届いている……?」 少女は頷いた。 「わたしに届いてる。 星の光があるから、 夜が怖くないんだよ」 ■ 星の試練星の影が少女に問いかけた。 「……おまえも……迷っている…… 星を救えるのか…… 光を守れるのか…… その迷いを……わたしに寄こせ…… わたしは……迷いを喰う……」 少女は震えた。 ――わたしは星を救えるのか。 ――青い鳥を助けられるのか。 ――星の心を軽くできるのか。 少女は深く息を吸い、 星の影に向かって叫んだ。 「迷ってもいい! 星も、わたしも、 迷いながら進むんだよ! 迷いは弱さじゃない! 迷うから、光を探せるんだよ!」 星の影は揺れた。 「……迷いは……弱さではない……?」 ■ 青い鳥の浄化少女の言葉が星の森に響き、 青い鳥は光を帯び始めた。 「……あたたかい…… これは……星の心……?」 鳥はゆっくりと立ち上がり、 羽を広げた。 青い光が森を照らし、 星の影は静かに消えていった。 鳥は少女に言った。 「……ありがとう…… おまえの心が…… 星の迷いを軽くした…… わたしは……再び飛べる……」 青い鳥は夜空へ舞い上がり、 星の光の中へ溶けていった。 ■ 星の帰還夜空の星々は輝きを増し、 森は静かに光を浴びた。 星の子たちは囁いた。 「星の心が軽くなった」 「青い鳥が戻った」 「星が笑っている」 少女は夜空を見上げた。 「星は……迷っても輝くんだね」 星は優しく瞬き、 少女の頬を照らした。 ■ その後の世界それ以来、 星がひときわ青く輝く夜には、 人々はこう言うようになった。 「あれは、星の森で眠っていた青い鳥が 星の心を空へ返した証だ」 星は今日も夜空を照らし、 迷いを抱きながらも、 静かに輝き続けている。 |